営業秘密は、「事業活動に有用な技術上又は営業上の情報」であることが必要です。この情報の有用性についても、情報の管理者が主観的に決めているだけではだめで、客観的に有用であることを証明しなければいけません。
情報の有用性のそもそもの前提として、その情報を秘密にしておくことで正当な利益があがることが必要です。例えば、有害物質の垂れ流しに関する情報や、犯罪の手口、脱税の方法、公序良俗に反する内容の情報は、法的な保護の対象に値しないものとして営業秘密として保護を受けないものと解すべきである」とされています。(東京地裁 平成14年2月14日判決参照)
情報の有用性とは、情報自身が事業活動に使用されたり、又は使用されることによって費用の節約、経営効率の改善等に役立つものであることを意味し、例えば「財やサービスの生産、販売、研究開発に役立つ等事業活動にとって有用なもの」であることが必要とされる(同判決)となっています。 他にも、直接ビジネスに活用されている情報だけではなく、間接的な価値がある場合も有用な情報といえます。
例えば、ネガティブインフォメーション(ある方法を試みてその方法が役に立たないという失敗の知識・情報のこと)にも有用性は認められます。 また、現在の事業に活用できる情報だけでなく、将来の事業に活用できる情報にも有用性は認められます。ここでいう将来とは、極めて近い将来もあれば、遠い将来のこともあります。例えば、商品の売買において、契約に至らなくとも何回か交渉した結果、購入をあきらめた顧客のリスト等は、依然として、すぐにでも販売に直結する可能性があるため有用性が認められました。(平成12年11月13日東京地裁判決)
他にも、同一情報でも、試験段階か製造段階かの違いによって有用な情報にもなり、有用な情報にならなかったりするケースもあります。例えば、京都地裁平成13年11月1日判決は「完全な試作にとどまるか具体的な商品化に向けたものかによって、有用性を異にする」と判示しています。