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経営のヒント

反社会的勢力の事例

今回は、反社会的勢力との取引が明るみにでた元上場企業の事例をご紹介したいと思います。この会社をS社としましょう。S社は、不動産業でしたが、テナントの立ち退き交渉を業務委託していた会社(T社、K社とします。)が、無資格であったため、弁護士法違反で起訴されてしまいました。しかも、T社K社の関係者が暴力団組織と密接な関係を有するいわゆる反社会的勢力ないしはその疑いがある人たちでした。後日S社が公表した中間報告書によれば、S社は、業務委託先であるT社、K社が反社会的勢力に属しているのではないかという疑念を抱きつつも、それ以上の追及をしないまま取引を継続していたとのことです。もう少し詳しく見ていきましょう。

(1)S社について
S社は、元は建設請負業者でしたが、第三者から土地を(場合によっては建物付きで)取得した上で、当該土地上に建設される建物建築をS社が請け負うことを条件として、デベロッパーに当該土地を売却し、後に当該土地上の建物建築を請け負うという事業(不動産ソリューション事業)も行っていました。土地を更地にしてから売却する場合及び旧建物が残ったまま売却する場合のいずれにおいても、旧建物の入居者の立退き交渉は買主への引渡し前に行っていました。
S社は、不動産ソリューション事業を行うなかで、旧建物の入居者の立ち退き交渉を迅速に行うことの重要性に気付きました。当初は弁護士を立てて適法に行っていたようですが、約4年もかかり、かつ、S社の資金繰りも苦しくなってきた経験から、立退き交渉を迅速に行うことができる委託先を常時探していたようです。
そのような中、従前から付き合いのあった業者から、平成15年春ごろ、T社を紹介され、取引を始めました。
図は、今回の事例に登場するS社と関係各社の関係です。 (2)S社がT社の取引開始時に行ったこと
①信用照会
S社は、主要取引銀行H銀行に対して、T社の信用力(経済的な信用)について事実上の照会を行っていましたが、取引銀行からは問題点の指摘は格別になく、大手金融機関とも取引をしていることから、信用してよいのではないかという旨の回答があったそうです。
なお、S社は、取引銀行H銀行から、T社の反社会性につき何ら言及がなく、かつ、T社の株主には上場企業が名を連ねていると聞いたことから、T社と反社会的勢力との関係については疑念を抱かず、かかる観点に重点を置いた調査は特段何も行いませんでした。

②S社とT社の面談
S社の役員及び社員が、T社に立退き交渉を委託するか否かについて最終的に決定するために、T社役員と面談しましたが、T社の株主もしくは取引先として上場企業の名前が列記された会社案内のような資料を見せられたそうです。

(3)立ち退き交渉をT社に委託
S社は、立ち退き交渉業務をT社に最終決定しました。T社からは、立ち退き交渉業務を下請のK社に再委託する旨の提案があり、S社は了承しました。
S社では、どんな下請け企業を用いるかについて関心を持たなかったため、K社がT社の下請けとなるに際しても、K社について、その素性や信用力等の調査を行うことはしませんでした。

(4)問題発覚
平成15年9月ごろ、S社が立ち退き交渉をしているビルの入居者から、立ち退き交渉業務の再委託先であるK社の役員に逮捕歴があることが記載された新聞記事がS社に送られてきました。このことをK社役員に問い合わせると、自らの逮捕歴を認めつつも、このような逮捕歴があるからこそ、どこまでが適法な行為であるかの判断が可能であり、適法な立退き交渉ができる旨の説明をしたそうです。
ちなみに、立ち退き交渉の現場では、入居者の早期立ち退きを実行するために、空いている部屋からお経を流す嫌がらせをしていたそうです。

(5)取引銀行からの警告①
平成19年の3月ごろ、S社の監査役及びS社社員は、主要取引銀行(以下「O銀行」という。) の担当者から、S社の取引先であるT社には問題があるため、今後、T社との取引を継続するのであれば、S社に対して新規融資等を行うことが難しくなる旨の指摘を受けました。その際、O銀行の担当者は、T社が反社会的勢力であるとまでは明示しなかったのですが、指摘を受けた監査役及び社員は、銀行がそのような指摘をしてくるときは反社会的勢力との関係を問題としていることを経験上知っていたため、O銀行としてはT社が反社会的勢力に当たるものと認識しているものと理解しました。
そこで、S社は、直ちに、T社との取引を打ち切り、K社と直接、業務委託契約を再締結しました。

(6)取引銀行からの警告②
平成19年6月に、S社の会長、S社の監査役及びS社 社員は、O銀行の担当者から、S社が取引しているK社は、以前指摘したT社よりも、更に問題がある会社である旨の指摘を受けました。O銀行の担当者は、T社についての指摘の際と同様に、K社がいわゆる反社会的勢力であることには言及しなかったが、前記指摘を受けたS社会長らは、O銀行の指摘が強い語調であったことから、O銀行としてはK社が反社会的勢力に当たると判断しているものと理解し、K社との取引を打ち切りました。
その後、平成20年3月、T社、K社の関係者は、立ち退き交渉業務を無資格で行っていたことにより弁護士法違反で逮捕されました。

ここまでが、S社の事例です。次回はS社の再発防止策をご紹介します。

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