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経営のヒント

売上の早期計上

今回は、形だけの検収書を受領し、売上の早期計上をしてしまった上場企業の機械メーカーのP社の事例をご紹介したいと思います。

(1)問題発生の経緯
P社は、機械製造会社です。P社は、売上の計上基準を出荷基準にしていましたが、不適切な会計処理を行う前に、検収基準に変更していました。その理由は、機械の出荷から検収までが長期間にわたり、出荷後も追加的な費用が発生していたことから、各事業年度の売上、利益の正確性を高めるという目的でした。
しかし、P社では、検収基準に変更した後も、機械の出荷した後に、追加的な部品の手配や、出荷した機械に関する現場作業、返品作業が相次いでいました。
このような事態に対し、監査法人から、「検収基準を完了していた取引に、後日になって何故、追加的な部品手配、現場作業または、返品などが発生するのか理解できない。検収書を受領しているのは確認できるが、形だけの検収書になっているのではないか。そうであれば、売上が早期に過ぎる。」という指摘が出てしまいました。

(2)検収書至上主義
P社では、社長をはじめ、管理担当役員、経理部員が検収基準に対する正確な理解をしていなかったようです。とにかく、検収書を受領した時点で売上が計上できるものだと思っていました。監査法人から、検収書を受領しただけでは売上計上してはいけないと指摘を受けた際も、会計知識の不足から、それを受け入れる必要はないと判断していました。

(3)売上計上時期の見直し
実際にP社で調査を進めた結果、検収書を受領しているものの、売上計上時期が早すぎるという取引がありました。それは次のような取引内容でした。
①顧客への納入は決算日以前であり、検収書を受領していたことから、当期中に売上計上したものの、機械などの基本的性能、品質などに関する重要な改良または工事が発生し、その解決が翌期にずれ込んだもの。
②P社内における顧客立会テストでは、機械などの基本的性能、品質などに問題がなかったため、検収書を受領し当期中に売上を計上したものの、商品の納入前に当社が実施した改良、工事などに時間を要し、出荷日が翌期になり代金の回収も翌期になったもの。

(4)P社の問題点
P社の場合の問題は、会計知識の不足もさることながら、検収書を先に受領しておきながら、その後に本質的な改良や工事を行っていたり、検収後の改良や工事により、当初の契約書に記載された出荷日や代金回収より大幅に遅れていたりと、売上計上を早くしたいがために、検収を形だけにしていたという点です。また、P社はかつて売上計上基準を変更する前にも、「機械の出荷から検収までが長期間にわたり、出荷後も追加的な費用が発生していた」とありますが、出荷後に追加的な費用が発生するような社内体質の原因は改まっていなかったようですね。次回は、P社のとった改善策をご紹介したいと思います。

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