今回は、架空売上の計上を上場前から計画的(?)に行い、上場を果たしたあと、架空売上の計上が発覚し、上場廃止となった会社をご紹介します。この会社をC社としましょう。このC社の事例は、一度不正取引に手を染めてしまうとなかなか抜け出せない例の典型となるのではないでしょうか。後ほど出てきますが、C社は、架空売上を計上して以降、いかにして架空売上(売掛金)の入金を図り、監査法人の目をくぐり抜けるかに奔走している様子が伺えます。また、架空売上の計上を主導したのが、C社の経営陣であったという点も見逃せません。早速見ていきましょう。
(1)架空売上計上の動機
社内調査報告書によると、C社の経営陣は同級生ということもあり結束が固く、創業以来早期上場を目標としており、「上場のために会社が成長していなかくては」という思いが強かったようです。これが一番の動機と言えるでしょう。
また、架空売上は、本業による業績の成長により解消できるものと思い開始したものの、思ったほど業績が伸びず、架空売上を隠蔽するために、架空売上の計上を続けたとあります。さらに、このような不正取引が発覚することで会社が倒産する恐れがあったため、中止することが出来なかったともあります。ここまで来ると本末転倒といいますか、呆れてしまいます。
(2)架空売上計上の経緯
C社の売上高の計上基準は、開発プロジェクトの完成度合いに応じて収益を見積もり計上していく進行基準を採用していましたが、C社の財務責任者は、この進行基準について、実際の入金があれば、前倒しで売上高を計上しても構わないと都合よく理解し、本来よりもかなり前倒しでの売上計上や、売上計上すべきではない案件についても売上の対象としていました。この背景には、C社の業務の特性上、年度の後半に比べ、年度の前半は売上高の計上金額が少なくなることが多く、早期上場のためには、企業の実態を少しでもよく見せようとしたのではないかと考えられます。
上場準備を進める段階で、契約金額の減額や、案件がとん挫したものが発生し、業績の下方修正を行わなければならないところを、「上場のためには数字を減額するためにはいかない」「監査法人や社内の人に疑われる」「社外取締役を出してもらっている会社に対し業績の報告を行っており、今更虚偽でしたとは言えない」という意識から、架空売上を計上し、正常債権を装うことになりました。
また、監査法人への監査対応のため、架空売上の発注書等を売上計上の時期に合わせて作り変え、事実と異なる進行基準表やタイムシートを作成し監査対応を行うようになりました。
(3)上場準備から上場へ
C社は、上場準備を進めている過程で一度主幹事が交代していますが、不幸なことに、その後C社は本当に上場を果たしてしまいます。
その間、C社の不正会計処理は、エスカレートしていきました。具体的には、売上の前倒し計上(誤った進行基準表の作成)にとどまらず、途中でとん挫・減額した案件や、売上計上後入金されない案件のATMからの入金補てん、監査法人への会計証憑(発注書、検収書)の偽造、残高確認書の偽造と広がっていきました。
次回以降は、C社の不正会計処理の手口について紹介したいと思います。