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経営のヒント

循環取引の再発防止策

今回は、前回の『循環取引の事例と問題点』で取り上げた会社が行った循環取引の再発防止策をご紹介したいと思います。

【再発防止策】
①取引開始基準の厳格化
循環取引、金融支援取引の防止の観点から、次の基準を逸脱する場合の取引は禁止することとした。
・対象商品が実需に基づき取引する。
・末端ユーザーに対象商品が納入された事実を確認できること。

②売上計上基準の変更
従来の「売上」、「仕入」を相殺したあとの「売上総利益」の額を、「純売上高」として計上するよう会計処理基準を変更した。これは、表面上の業績を取り繕うために、リスクの大きな取引に手を染めることを防止するためである。

③取引の事後審査機能の強化
内部統制監査室に、「取引リスク管理チーム」を設置し、取引開始基準の順守状況、営業取引に伴う債権債務及び商品在庫等の諸データを収集・分析させ、その結果に基づき営業部門、その他関連部署に是正勧告できる権限を与え、取引の事後審査機能を強化した。

④内部牽制機能の強化
循環取引が行われた事業部では、仕入業務と販売業務を同一部内行い、かつ決済権限者も同一であったため、部内牽制が利かない体制であった。今後は、仕入業務と販売業務を分離させ、業務の手続をする者と承認者も分離させ、内部管理体制を強化した。

⑤業務システムの抜本的な改新
これまで会計等の業務処理システムに対する投資が長期間なされておらず、システムを活用した問題の早期発見ができなかった。そのため、製造・販売・ロジスティックスも含めた統合業務システムを構築することとした。

⑥長期滞留人事の解消
人事の固定化の解消と刷新を目的として、大規模の人事異動を発令。人事の固定化を防止する。

改善策の解説をしたいと思います。
改善策①として挙げられている、実需にもとづく取引か否かの確認、末端ユーザーの納品確認は、取引を行う際の基本動作です。
取引を開始する前に、どのような商流で、取引するものは何なのか、どこに納品されるのか、納品倉庫は必ず指定した所であるか、外部倉庫業者からの納品書は受領できるのかなど事前に確認し、取引開始後も実際に確かめる必要があります。
改善策②は、上記に記載のとおり、見かけだけの数値にとらわれず、数値の質を見る必要があります。
改善策③の取引の事後審査について、取引内容の継続的なモニタリングも循環取引の防止をするうえで有効な内容です。モニタリング内容は、改善策③の他、与信限度額を職責別に設定することで決済権限の明確化を図る、循環取引の特徴である低収益率案件の取引内容の確認や実査、売掛金の金額が販売予算に比較して極端な異常値となっていないかなどが考えられます。
改善策④の内部牽制機能の強化策も、基本事項です。仕入と販売を同一権限者のもとで行っていては、取引内容を外部からチェックすることはできず、不正行為の温床となります。
改善策⑤の業務システムの構築ですが、循環取引防止のポイントとしては、改善策⑤で記載の対応の他、品番登録部署の一元化を図り、担当者レベルで勝手に循環取引用の商品登録をできなくすることが考えられます。他にも、循環取引を行う際、とかく不明確になりがちな取引内容、商品情報について、明確に記す必要のない(循環取引を行う上では都合のよい)諸口勘定、雑品番の使用を禁止することで循環取引の防止をすることも考えられます。
改善策⑥の人事異動も定番の内容で、固定化した人事は、不正行為のチェック機能が働きにくくなり、不正行為を抱え込む原因になります。
今回は、循環取引の事例をご紹介しました。これを読まれている読者の皆様も、業務改善や内部統制を考える上で参考にしてみてください。

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